あなたはこの話を聞いてどう思われますか
むか~し昔、私が子供の頃(中学生くらい)に、弊社と取引のある唐木屋さんから聞いた話なのですが
先日、その方がお亡くなりになられたと聞いて、今でも印象に残っている子供の頃聞いた話を思い出しました
お花を飾るための 「花台」
紫檀(したん) や 黒檀(こくたん) を材料にしたもの、下の写真のようなものですね、お家にあるかもしれません
唐木屋さんにお客様からこんな依頼が来たそうです
「昨年亡くなった祖父が大事にしていた花台が壊れた、思い出の品なので修理できないものか?」
唐木屋さんは品物を見た瞬間思いました 「9800円くらいの大量生産の安物」
しかしベテランの唐木屋さんはそんなことを表情には一切出さず、お客さんにこう言いました
「ほぉ~凄い品ですね、さすがはおじい様が大切にされていた品、今この素晴らしい花台を作れる職人は、ほとんど残っていないですよ~」
修理に3万円ほどかかりますが良いですか
お客さんは、そんなに良いものならば・・・・・ということで修理代3万円を了承したそうです
新品を買っても9800円、それを3万円の修理代を取るなんて酷い そう思いますか
しかし、修理するために品物を預かり、職人に送り修理してもらい、また送り返すっていう工程は結構手間も時間もお金もかかります
それを考えると3万円は妥当な数字だといえます
この話には続きがあります、唐木屋さんは修理が済んだ花台を桐の箱に納め(もちろん実費は頂きません)
お客様宅へ自らお届けしたそうです
その際に桐の箱に入っている花台を見て、この箱はどうしたのですか とお客さんが尋ねたところ
唐木屋さんは 「この花台を修理してくれた職人が、久しぶりに良い花台を見た、修理させてもらったお礼にと、桐箱に入れて
送ってよこしたのです」
お客さんは涙を流して喜んだそうです
もし仮に最初の段階で、唐木屋さんが 「新品を買っても9800円程度の品ですよ、修理するとその何倍も費用がかかります」
なんて言っていたら、ただのゴミになっていた可能性もあると思います
唐木屋さんはおじいさんが大切にしていた、というお客さんの花台に対する思い入れを見事にくんで
その花台を 「祖父が大切にしていた高価で思い出の詰まった宝物」 に変えてしまったわけです
なんか素敵な商売でしょ
その話をした後、その唐木屋さんは 「これが本当の商売なんですよ、若さん」 と教えてくれました
ちなみに当時の昔堅気の職人さん達は私のことを 「若」(わか) とか若さんと呼んでいました
家具屋の三代目の若さんということです
しかし私は今、若さんではなく、おバカさんになってしまいました
落ちがついたところで、また明日(笑)