先代が亡くなって約10年
親父の使っていた事務机を事務員さんが整理していたら、引き出しの奥に何かつまっているのを発見した
取り出してみると、亡き先代(親父) が書き残した原稿用紙数枚に及ぶ文章だった
父の死後、弊社に縁あって働いてもらっている事務員さんが 「こんなもんが見つかりましたぁ~」 と報告してきました
その文章は「新井 生夫(親父) の命燃え尽きた後、以下の事を心において商売に精進せよ」 の書き出しから始まる
原稿用紙7枚に、商売に対しての気構え、社長としての所作ふるまい
金策、人事、不動産、経営方針など多岐にわたり事細かく書かれてあった
・・・・・・・・・もう少し早く見たかった 全文を読む前の私の正直な感想・・・
死んで10年もたってから見つけても、もう遅い
だってそこに書かれていたことと、丸っきり正反対のことばかり、この10年私はやってきましたから
でも一つだけ面白かったのは
親父自身が祖父から二代目を引き継ぐときに、プレッシャーに潰されそうになったと文章にはあり
三代目を継ぐお前は可哀そうだと
そのプレッシャーと戦う術や気構えについても書かれていた・・・・・・・これも今更読んでもという内容だが
へぇ~ 親父も若い時はプレッシャーを感じていたのか、知らんかった(笑)
考えてみたら、ある程度かたちになって継承した私と、のるかそるか それこそ時代として
一家が食っていけるか、路頭に迷うかのギリギリの中で二代目を受け継いだ親父の方が、重圧が大きかったと思う
その点、心配してくれる親父には申し訳ないけれど、それほどプレッシャーには感じずにここまで来た
まぁ、全く無いと言えばウソになりますが
私が子供のころは、家業を継げば親の代より大きくして当たり前、現状維持でボンクラ息子、小さくすれば何を言われても仕方ない
祖母や母にそう言われ続けてきたが
私が3代目を継いだ時は時代が良かった・・・・・・良かったと言えば怒られるかも
だってきら星のごとく輝いていた、大手の家具店が軒並み、倒産、廃業、閉店・・・・・大幅売上ダウンで規模縮小・・・・・
これが普通の経営者なら、いや自分だけは何とか頑張って受け継いだ看板を守るぞ
となるのだろうが、私は実はとんでもないことを考えていた
やったぁ~ みんながボンクラ息子の時代がやってきた(笑)
ラッキ~ これでお店を小さくしてもボンクラ息子とかアホぼんって言われんで済む
ある意味、免罪符を手に入れた私は強かった
思いっきり、それまでの常識やセオリーを一切無視、好きに暴れて、それで商売が傾いても時代が時代、しゃ~ないわい
当時の従業員には大変申し訳ないが、こんな不埒なことを考えていた・・・・・・とんでもない社長だった
一生懸命・・・・・・ではなく 適当にしかし精一杯、目一杯やった・・・・・・・・・無茶を(笑)
仕入れや販売の仕方も、粗利設定も、宣伝広告費を一切かけないのも、同業他店と仲良くしないのも
結果的に、無茶をやればやるほど売上が上がっていった
今回発見された手紙に書かれていたこととは、真逆の経営方針
・・・・・・・その夜、夢を見た
霊感の強い、母親の血を引き継いでいるせいか、私いわゆる 「見える体質」 」
夢の中で私は親父に、「どや 親父ん時の2倍以上の売上やで」 と自慢をこいていた
親父は何にも言わずに黙っていたが (基本、あの世の人が夢に出てくると、あまりしゃべらない)
その顔、表情から
「あほぬかせ ワシの書いたあの手紙通りにしとったら、2倍どころか5倍になっとるワイ」
そう言っていると感じられた
参りました、本当にそうかもしれません
その翌朝、母親にあってその夢ことを話すと、実は手紙はもう一枚あると教えてくれた
内容は親父から母親へのラブレターの様な内容で、どうやら私に見せるのが照れくさかったらしい
あとで読んで、と手渡しされた最後の一枚を帰宅後読んでみた
最後に手紙にはこう書かれていた
「俺は引き継いでくれる後継者がいる、引き渡せる会社がある、俺は一生親バカを貫けて幸せものだった」
亡くなる数カ月前に書かれた手紙だった
私は不覚にも手紙に数滴の塩水をこぼしてしまった・・・
あぁ一生、クソ親父には勝てない